肉食者のたしなみ
我々日本人がインド人と食事をするとき、気にしなければならないこと、
それは、相手が何を食べられるのかということです。
肉を食べるのか、卵は食べるのか、肉でも牛やバッファローは食べるのか、豚は、山羊は?
ムスリムでもハラール肉しか食べないのか、それとも豚以外はハラームでも食べるのか。
菜食主義者でも、肉食を提供するお店に行くのはOKの人か、同席者が肉を食べるのを気にしない人なのか。
家に招くときも、過去に肉を料理したことがある台所で作った料理を食べられる人なのか、
肉が保管されている冷蔵庫に入っている野菜を食べられるのか、食器は使えるのか。
写真1:ゴア州のシーフード料理
自分が何を食べる人かということは伝統的に宗教的な思想や社会的立場と関係するものです。
インドでは、ヴェーダの時代には、供犠にされた牛も含めてバラモンたちも肉類は食べていたといいます。
いっぽう菜食主義、不殺生の教えは、前 6~前 4 世紀ごろ起こった、ジャイナ教や仏教 の影響によって、
ヒンドゥーに取り入れられていったと考えられています。
そして、前 2 世紀ごろに書かれたマヌ法典では、矛盾が見られながらも、
肉食を忌避することと、積極的な菜食主義の選択が説かれています。
ヒンディー語では菜食主義者のことをシャーカーハーリーと言い、
非菜食主義者のことをマンサーハーリーと言います。
基本的に菜食のほうが道徳的に良い実践なので、
日常の食事において気を使うべきはマンサーハーリーのほうです。
さらに、日本食やインド料理以外の食事の場合、使われている食材に関する知識は
我々日本人のほうが持っているので、特に気を付けてあげる義務があるといえるでしょう。
一般的にインドの料理は、動物性の出汁(スープ)というものを使わないため、
基本的に使われている材料は、一目瞭然です。
見た目に明らかでない肉が食事に交じっている可能性が、思いもよらない人たちがいるということを、
インドに来る際は覚えておきましょう!
写真2:メガラヤ州の肉まん、中身は豚肉
それでは、気の使い方を説明します。
まずは時間の分離。
インド、特にヒンドゥーカレンダーにおいては、肉食を避けるべき日があります。
例えば火曜日や土曜日、多くのヒンドゥーのお祭りの日、また家族の儀礼などを行う日や期間などです。
次に場所の分離。
例えば外食はするけれど家の中では肉を食べない、という家族もあります。
またインドの聖地の多くは町全体が菜食だったりもします。
最後に道具の分離。
肉に触れたことのある道具を菜食主義者に食べさせる料理の調理に使わない、など。
私の友人は部屋を借りるときに大家さんから、外で買ってきた肉料理を部屋で食べるのはかまわないが、
部屋に付属の台所は肉の調理に使わないようにと言われたそうです。
また、金属のほうが土や木よりも不浄を伝えないとされているため、
インドでは金属の食器がよく使われています。
インドは肉料理も野菜料理もとてもおいしい国。
私たちの食文化が尊重されていないなと感じることも多々ありますが、
少なくとも我々は他者の食文化を尊重し、広い国土で出会える奥深い味を味わい尽くしましょう!
写真3:みんなで食べる誕生日ケーキは必ず卵を使っていないものを