インドで出会った優しい人々
こんにちは!私は今、パソナインディアでインターン生として働いています。
実は私、インドに来るのは今回が2回目で、初めてのインドはヒマーチャル・プラデーシュ州での国際ボランティアでした。今回はその時に触れたインドの人々の優しさを紹介すべく、記事を書いてみようと思います。少し長文になりますが、是非お付き合いください!
デリー空港に到着したのは、真夏の夜でした。空港内は遅い時間帯にも関わらず騒然として活気に満ちていましたが、ろくな下調べもせずに到着してしまった私は、不安でいっぱいでした。ボランティア受け入れ先の担当者であるマダンさんとの待ち合わせ場所へ、どうやって行けばよいのか曖昧だったのです。
ひとまず空港でsimカードを買ったのですが、何度試してもなぜか通信できず、携帯電話はガラクタに成り果てました。頼りの綱であるマダンさんに連絡ができず、また日本の家族へ無事到着の連絡もできず、途方に暮れてしまいました。
マダンさんとは翌日の正午にヒマーチャル・プラデーシュ州のとある鉄道駅で待ち合わせの予定です。連絡手段が無いため、なんとか時間までに待ち合わせ場所にたどり着かなければなりません。切羽詰まった私は、空港でだれかれ構わずたくさんの人に声を掛けました。素っ気なくあしらわれ続けること10人以上、ある女性が足を止めてくれました。
灰色のTシャツにジーパンを履いた27歳くらいのドイツ人で、インドから帰国するところだったそうです。その女性は私の目を真っ直ぐに見つめ、私の状況を聞いてくれました。焦ってしどろもどろになっている私が少しでも落ち着けるよう、カロリーメイトのような食べ物を分けてくれ、ヒマーチャルまでの行き方を調べて色々と提案してくれました。そして私の代わりに、ヒマーチャル行きのバスのチケットも購入してくれました。
その女性にお礼を言って別れた後、バスが来るまでの間、私はバス停から少し離れた場所にひとり座っていました。すると、ある男性が話しかけてきました。黒のTシャツ、黒のズボンという出で立ちの25歳くらいのインド人でした。
急に英語で話しかけられたこともあり反射的に警戒してしまったのですが、それを感じ取ったのか、彼は私から少し距離をとって腰掛け、優しい口調で話をしてくれました。私の状況を理解すると、何はともあれ両親に連絡した方が良い、と言いインターネットを共有してくれました。それからバスが来るまでずっと一緒に待ってくれ、不安な私に言葉をかけ続けてくれました。
バスに揺られて6時間くらい経ったころ、人気のない道端で降ろされました。どうやら待ち合わせの鉄道駅の近くに到着したようなのですが、時間は深夜3時。街灯もなく、辺りは真っ暗でした。近くの人に駅までの行き方を尋ねると、少し離れてはいるものの歩ける距離だと分かりました。深夜とはいえ季節は夏。暗くて凸凹した道を、重い荷物を引きずり、汗だくになって歩きました。
本当にこの道でいいのか不安なまま知らない夜道を歩くのはとても恐ろしかったですが、無事に駅にたどり着くことができました。
なんとか待ち合わせの駅には着いたものの、マダンさんへの連絡手段は未だに無く、とにかく会えることを信じて待つほかありません。駅のベンチで横になり待つことにしました。喉はカラカラで、空腹で吐き気を催すほどでした。自分で水や食べ物を買えばよかったのですが、当時はインド=不衛生という先入観もあり、何が安全なのか分からずひたすら我慢をしてしまっていたのです。
明け方、近くにいた家族が声を掛けてきました。その家族はこれから家族旅行に出かけるところのようでした。私が満身創痍でうなだれている様子を見かねて、声をかけてくれたようです。
上手く声が出なかった私に、8歳くらいの女の子が飲み差しのペットボトルの水を分けてくれました。15歳くらいの男の子はインターネットを共有してくれ、あらためて自分の家族や友人に状況を報告することができました。お父さんは、私のボランティア先の場所の情報を周囲の人に聞き回ってくれました。お母さんは「大丈夫だよ、元気出して!」と声を掛けながら、優しく頭を撫でてくれました。女の子も一緒になって背中をさすってくれました。
少し落ち着いたところで「迷惑をかけてごめんなさい…」と伝えると、お父さんは「人は皆支え合って生きているのだから気にしないでいいよ」と言ってくれました。何度も何度も感謝を伝え、お別れしました。
あらためてひとりになると、極限まで張り詰めていた糸が切れたかのように色々な感情が込み上げ、目から涙が溢れてきました。ここにたどり着くまでに出会った人々の優しさと気遣いが思い出され、感謝や情けなさなどが入り混じった気持ちでした。色々なことが巻き起こった一晩でした。命を救ってくれたと表現するには大袈裟かもしれないですが、私にとっては、すごく大きな経験でした。そして、インドに対する印象をガラッと変えてくれた一晩でした。
その後、マダンさんと合流することができ、無事にボランティア活動を開始することができました。
インドの有名な観光地を訪れたことがある人の中には、インド人に対して良くないイメージを持っている人もいるかもしれません。確かに、詐欺やぼったくりなどのエピソードはよく耳にします。そういう人がいるのは事実なのでしょう。
ですが、困っていそうな人がいたら放っておかない、持っているものを何でもシェアしようとしてくれる、なにより親身になって励ましてくれる、といった底抜けに優しい人々も数えきれない程たくさんいるのが、インドという国の懐の深さであり、多くの人を惹きつけて止まない理由の一つなのだろうなと感じています。
皆さんがインドへ来られる際は準備や下調べをしっかりしましょう!
そして、困ったら助けてくれる優しい人が多い国でもあることを信じて、是非インドに飛び込んでみて欲しいと思います。
余談なのですが、今月3月25日にホーリーというお祭が開催されます。インドでとても盛大に祝われるお祭りで、いつも以上に活気に満ち溢れた光景が見れるそうです。私も実際に参加してみようと思います!