インド生活約7年間で一番忘れられない、 最高にAdventurousなArunachal Pradesh州ほぼ横断旅

パソナインディアから約7年間プロジェクトスタッフとして日系金融機関で勤務をされていた七戸さんにインド経験と思い出についてまとめていただきました。今回はインド国内旅の想いでです。通常の観光ではなかなか体験できないディープな経験についてまとめていただきました!


2020年にインドでの生活を始めてから、6年と9か月。
振り返ってみると、この約7年間、本当にいろいろなことがありました。仕事だけでなく、日々の生活や、一生一緒にいたいと思えるような人たちとの出会い、そしてたくさんの旅行を通して、本当に多くの経験をすることができました。
「インドに来なかったら、今の自分はなかった。」
今では、そう思えるほど、この国で過ごした時間は、私にとってとても大きな意味を持つものになりました。
そんな約7年間のインド生活も、残すところあと数日。
コラムを書く機会をいただいたので、今回はそんな私がインド生活の中で一番思い出に残っている旅、そしてインドで訪れた場所の中でも一番大好きな場所であるArunachal Pradesh州への旅について、記録として残したいと思います。
それは、Arunachal Pradesh州を11日間かけてほぼ横断した、総移動距離約1,400km、移動時間だけでも約42時間に及ぶ、私にとって過去最高にAdventurousなロードトリップでした。
険しすぎる山道、急すぎる坂道、想像以上に長い移動、予想外の出来事、そして言葉では表現しきれないほど美しい景色。
「インドってこんなに綺麗なんだ!」と何度も驚かされながら進んだ11日間。
今回は、インド人、フランス人の友人たちを含む6人と、ドライバーさん1人の計7人でのグループ旅。
そんな11日間の旅を、1日目から少しずつ振り返っていきたいと思います!

Day 1 Delhi → Itanagar
DelhiからIndiGoの直通便で約3時間、Itanagarへ。
季節は3月初旬。Delhiでは段々と暑くなり始めている中、Arunachal Pradeshはまだ肌寒い。
到着した瞬間、空気の綺麗さとひんやりした気温に驚いた。
早速みんなで市場へ。
そこで食用のイモムシを発見し、衝撃を受ける。
「え、蚕だ!蚕って食べられるんだ!」
旅の間に食べてみたい……と心に決める。
明日からどんな経験が待っているのか、期待に胸を膨らませながら、1日目終了。

Day 2 Itanagar → Dambuk
2日目から、いよいよロードトリップ開始!
目的地はオレンジの町、Dambuk。約9時間の移動。
朝8時ごろ出発し、途中でAssam州を通りながらひたすら進む。
この日はまだ平坦で舗装された道。
途中で出会った小さなヤギや小柄な牛が可愛くて癒される。
午後4時ごろ、Dambuk到着!
一面にオレンジの木が広がる町だけど、今回はオフシーズン。少しだけ実がなっている木を発見。
夕方になると一気に気温が下がり、かなり寒い!
夜はみんなで焚き火を囲んで暖まる。

Day 3 Dambuk → Anini
3日目から、景色が一変。
道がどんどん険しくなっていく。
曇りと雨の中、ひたすら山を登る。途中には雪が残る山々。
綺麗!
と思ったのも束の間。
急な坂道と雨でぬかるんだ道路でトラックが立ち往生。別のトラックが必死に引っ張っている。
それを横目にさらに進むと、土砂崩れの影響で新しく作られたルートへ。これが結構急な坂。
さらに雨でドロドロ。もちろんガードレールはなし。
「これ、本当に行けるの?」
そんな私たちをよそに、ドライバーさんは迷いなく進んでいく。
さすが凄腕ドライバーさん!
無事に難所を突破し、午後7時ごろ、約11時間かけてAniniに到着。Aniniは完全に冬の気候、雪も残り、寒すぎ!
薪ストーブが冷え切った体を温めてくれて心もぽかぽか。

Day 4 Anini
この日はAnini周辺を探索。向かったのはDibang Valley。
雪山、そして雨で山肌から流れ落ちる滝。
あまりの美しさに圧倒される。
川辺では石投げ競争。みぞれのような重たい雪を投げ合って、みんなで大はしゃぎ。
周辺のお店は1〜2軒ほど。
そこで飲んだチャイと食べたMaggiが最高に美味しい。
大自然の中、焚火を囲ってみんなで飲む温かいチャイ。幸せなひと時。
お店の人が狩りで獲った獣の毛皮をまじまじ見ながらチャイを飲み進める。
夜はまた薪ストーブを囲んで、みんなで暖まる。
不便なはずなのに、なぜか幸せ。
今でも忘れられない時間。

Day 5 Aniniに閉じ込められる
この日は次の目的地へ移動する予定。
ところが、昨夜からの大雨で土砂崩れが発生。
Aniniから出る唯一の道が封鎖されてしまった。
しかも携帯は圏外。
まさかの、Aniniから出られないというハプニング。
雨で行ける場所もなく、携帯はずっと圏外のまま。誰とも連絡が取れない。
みんな心配しているだろうなと思いながらも、停電中の宿で薪ストーブを囲み、自然と始まったゲーム。
予想以上に楽しくて、大笑いしながら時間が過ぎていく。
圏外のまま雨も止まず、「この日はいつ帰れるんだろう」という不安を抱えたまま、1日が終わった。

Day 6 Anini → Roing
次の日も雨。
わずかな希望を頼りに、Wi-Fiの繋がる場所を探して町へ出た。
最終的にたどり着いたのは、警察署長事務所。
事情を説明すると、なんとWi-Fiを貸してくれることに。
やっと繋がる――そう思ったのに、何度試してもメッセージが送れないし受け取れない。
「なんで?」と戸惑っていると、iPhoneを使っている一人の友達を除いて、問題なく連絡できていることに気づく。
どうやら、iPhoneユーザーだけが繋がらないらしい。
まさかの事態に、「iPhone、緊急時に使えないじゃん…!」と、こんな場所で初めて知ることになった。
友達の携帯から、たまたま繋がっていた日本にいる友達を通して、親に生存の連絡をすることができた。(もしこの繋がりがなかったら、私は連絡できていなかった。友達に感謝!)
そんなこんなで、みんな無事に家族や大切な人へ生存の連絡を終えることができた。
その頃には雨も上がり、私たちは少し車を走らせて外へ出ることに。
ふと見上げると、雲の隙間から青空がのぞいていた。
久しぶりの青い空に、大興奮!
しばらく走らせていると、大きな丘のような山を見つけた。
登ってみることに。
思っていたよりも急な山道。息を切らしながら、ひたすら上へ、上へと進む。
ふと、一息をつこうと後ろを振り返る。
その瞬間、思わず言葉を失った。
そこには、今まで見たことのない景色が広がっていた。


なだらかに続く山の重なりと、遠くまで広がる景色。
光と影で、山の形がくっきり浮かび上がっている。
さっきまでいた場所が、ずっと下に見える。
「こんなに綺麗な景色見たことあったかな」
雨に閉ざされていた世界が、一気に開けたような気がした。
久しぶりの青空の下で見る景色は、想像以上にきれいだった。
綺麗な景色に見とれていると、ちくっと何かに刺された気がした。
「痛っ!なに?」
刺された場所を見ると、うっすら血がにじんでいる。
えっ?と思った瞬間、またちくっ。
「なにーー?」
慌てて周りを見渡すと、ハエが飛んでいる。……ハエに刺された?どういうこと?
状況が理解できず、ただただ混乱。
どうやらここには、吸血するハエ、ダムダムバエが生息しているらしい。
しかもArunachalの森林地帯や川の近くに多く、刺されると猛烈にかゆくなるという。
絶景どころじゃない。
とにかく刺されたくない一心で、さらに上を目指して歩き続けた。
息を切らしながら進み、ようやく頂上にたどり着く。
ひんやりとした空気と、目の前に広がる景色。達成感。
この時点で、時刻は午後3時ごろ。
朝までの雨が嘘だったかのように空は晴れ渡り、「もしかしたらAniniから出られるかもしれない」という希望が見えてきた。そして同時に、携帯にも電波が戻った。
私たちは急いで山を下り、宿に戻ってパッキング。すぐにチェックアウトした。
町に出ると、「外へ続く道が開通したらしい」という情報が入る。
半信半疑。でも、行くしかない。
ちょうど次の目的地へ向かいたくて、うずうずしていたところだった。
午後4時、とにかくAniniを出たい一心で、車を走らせる。
そして現れたのは、来るときにも通った、あの急な坂道。
どうやらここが封鎖されていたらしい。
目の前にすると、やっぱりとんでもなく急で、思わず「これは無理でしょ…」と確信するレベル。でもドライバーはやる気満々だ。
「本当に行けるの?」
雨でぬかるんだ道を、車はゆっくりと登り始める。
タイヤが滑りそうになりながらも、少しずつ、確実に前へ進んでいく。
すごい。進んでる。絶対無理だと思ったのに。
やっぱりこのドライバー、ただ者じゃない。
一番の難関をなんとか切り抜け、ついにAniniから脱出。安堵。
そこからは、ひたすら車を走らせ続ける。
そして夜中の12時頃、次の目的地であるRoingの宿に到着。
長い、長い1日だった。

Day 7 Roing → Longding
この日は、Roingの町にあるハンドメイドのお土産屋さんへ。
部族の人たちが作ったものが並び、どれもデザインや色使いが可愛らしい。
買い物を楽しんだあと、現地の人のご厚意で、Arunachalの伝統的な家を見せてもらえることに。
竹と草でできたその家の中へ、足を踏み入れる。
中は涼しく、わずかに差し込む光が空間をやさしく照らしている。
土間の中央には存在感のある囲炉裏があり、その上の天井が煤で真っ黒に染まっているのもまた、かっこいい。
ゆっくりと時間が過ぎ、次の目的地、ドライバーさんの故郷でもあるLongdingへ出発。
約6時間のドライブを経て、Longdingに到着。
着いた頃にはすでに日が落ちていて、あたりは真っ暗。
宿からは、見下ろした町の明かりがきらきらと輝いて見え、「どんな場所なんだろう」と思いながら、その日を終えた。

Day 8 不思議な町 Longding
この日はLongdingを散策。
昨日の暗さからはまったく想像できなかったが、町にはArunachalの伝統的な家々が立ち並び、まるで別の世界に来たような感覚になる。
どこか、教科書で見た戦後の日本を思い出すような雰囲気で、タイムスリップしたみたいだった。
そして衝撃的だったのが、中学生くらいの子どもが大きなショットガンを抱えて歩いていたこと。
ハンティングにでも行くのだろうか。
この町は、これまで訪れてきた場所とは明らかに空気が違う。
さらに驚いたのは、人々の反応だった。
外国人を見るのが珍しいのか、私たちが通るたびに、みんな笑顔で手を振ってくれる。
「こんな世界があるのか」と、感動と興奮が入り混じる。
そんな中、ドライバーさんの伝手で、この町の“キング”と呼ばれる人物の家に行けることになった。
キング?
話を聞くと、村ごとにリーダーのような存在がいて、いわば“キング”的な立場らしい。
さらに驚いたのが、Arunachalでは一夫多妻制が認められているということ。
このキングは、結婚したい女性がいれば妻に迎えることができるらしい。
なんとも想像を超える世界だ。
一応手土産にお酒を買い、キングの家へ。
そこにあったのは、これまで見てきた伝統的な家とは比べものにならないほど大きな家だった。


この広さをすべて竹と草で作っていると思うと、その技術に驚かされる。
恐る恐る中へ足を踏み入れる。
すると、普通のTシャツに短パン姿の小柄なおじさんが現れた。
この人がキング…?
想像していた人と違う。笑 めっちゃ普通。そういうもんなのか。
ひとまず手土産を渡し、挨拶をする。
ふと周りを見ると、キングのそばには家来のような男たちが立ち、こちらを囲むようにじっと見ている。
その視線は鋭く、まるで今にも襲いかかってきそうな、張り詰めた空気だった。
全く歓迎されていない笑
あんな感覚は人生で初めてで、なぜか少し興奮した。
あの空気感は今でも忘れられない。
さらに写真を撮ろうとすると、強めに断られる。
そして家の中には、またしても大きなショットガンが置かれていた。こわっ!
余計なことをするのはやめておこう。
キングが家の中を順に案内してくれた。
この“キング”には妻が6人いるらしく、それぞれに部屋が割り当てられているよう。
妻たちはシャイで、あまり姿を見せてはくれなかった。
さらに奥へ進むと、大きなホールに出る。
そこには、Arunachalでよく見かける大きな角を持つ牛Mithunの頭骨が、10頭以上も飾られていた。


どこか神聖で、不気味な空気が漂っている。
庭に出ると、何やらInternational Women’s Dayのお祝いが開かれていた。
色とりどりの装飾を身にまとい、華やかな部族衣装を着た女性たちが集まっている。
その光景に思わず見とれる。――が、その感動も束の間。
やはり歓迎されていない。
まるで違う惑星から来た存在でも見るかのように睨まれる。
同じ町なのに、場所によって人々の反応がまったく違うのが面白い。
そんな奇妙な体験を終え、無事に宿へ戻る。
そのあとは近くのバーで、友達の誕生日をお祝いした。
とても思い出深い一日になった。

Day 9 Longding → Itanagar
濃密な時間を過ごしたLongdingを離れ、旅のスタート地点であるItanagarへ向かう。
楽しかった旅も、いよいよ終わりに近づいてきた。
ここまで本当に様々な出来事があり、振り返るととてもエキサイティングな旅だったとしみじみ感じながら、道中を過ごした。
しかし、旅の疲れもあってか、移動中はほとんど眠っていた気がする。気が付けば、あっという間にItanagarに到着していた。
…そしてお腹が空いた。
宿の下の路上でフライドチキンを売っているのを発見し、迷わず購入。
美味しい。でも、なんだか少し半生っぽい…?
まあいいか、と思いながら、空腹には勝てずほとんど食べ切ってしまった。

Day 10 Itanagar
朝、目を覚ますと異変に気づく。
やばい、気分が悪い。
「あれ、絶対昨日のフライドチキンだ…」とすぐに察する。
食べたのは私だけ。結果、見事に私だけダウン。しかも発熱。最後の最後で油断してしまった。
友達にもらった薬を飲み、そのままひたすら休む。
そして夕方頃、なんとか歩けるまでに回復。
ちょうど近くでInter Tribal Festivalが開催されていたため、みんなで参加することに。
会場で、現地の友達がArunachalで有名なレポーターを発見。声をかけたいけど躊躇している様子。
一方の私は、その人が誰なのか全く知らない。
ならば、と迷わず声をかける。
「この子が一緒に写真撮りたいって!」
……これが間違いだったかもしれない。
友達はすかさず「この人、日本人!」と暴露。
するとレポーターは一気に私に興味を持ち、気づけばマイクをつけられ、断る隙もないままインタビュー開始。
しかもレポーターはノリノリで、次々と質問を投げてくる。
それに対して答える私。どうやら会場でもそこそこウケている様子。
気づけばそのインタビューは、しっかりFacebookのメディアページに掲載され、リアクションは約8,000件。
「中国人スパイだ!」なんてコメントを書く人も笑
……とはいえ、なかなかの黒歴史。
そして旅の道中、ずっとみんなで聴いていたArunachalの人気歌手、Chorun MugliがFestivalの最後に歌うらしい!
これまで何度も聴いてきた曲を生で耳にした瞬間、その歌声に圧倒され、気づけばすっかり引き込まれていた。
この旅を通して、彼の音楽に心を奪われ、すっかり大ファンに。
今では、インドで一番好きなアーティストになった。

Day 11 Itanagar → Delhi
デリーへ帰る日。
飛行機まで少し時間があるということで、友達が最後に自宅でローカル料理をご馳走してくれることに。
メニューは、念願だった蚕とMithun(以前紹介した大きな角を持つ牛)。


黄色いイモムシはしっかりと調理されていて、見た目は意外にも普通に美味しそう。
恐る恐る…ではなく、意外と抵抗なく一口。
「…ん、美味しい!」
味はどこか大豆に似ていて、タンパク質らしい素朴な風味。想像以上に食べやすく、普通に美味しい。
旅の最後に、これ以上ないほどローカルな食事を体験できて大満足。
そのまま空港へ向かい、名残惜しさを感じながら「また絶対に来る」と心に決め、その地を後にする。
そして、またデリーのカオスな日常へと戻っていくのだった。

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
インドは、訪れる場所によって景色も文化も人々も大きく異なる、とても多様性に富んだ国です。その魅力は一言では言い表せません。
もちろん、楽しいことばかりではなく、うまくいかないことや、もどかしさを感じる場面は何度もありました。それでも、この国をここまで好きになれたのは、数えきれないほどの美しい景色と、かけがえのない出会いに恵まれたからだと思います。
約7年間、大きなトラブルに巻き込まれることなく、この地で多くの経験を積み重ねてこられたことに、心から感謝しています。
そして今回の旅で訪れたArunachal Pradeshは、そんなインドの魅力を改めて強く感じさせてくれる場所でした。
インドでの生活はまもなく終わりを迎えますが、ここで得た経験や出会いは、これからもずっと私の中で生き続けていくと思います。
またいつか、必ずこの地を訪れる日を楽しみにしながら、この旅の記録を終えたいと思います!